教室紹介

教授あいさつ

今村先生 公衆衛生学講座は、平成19年6月、今村知明が4代目教授、健康政策医学講座として初代教授に就任し、平成28年10月、「公衆衛生学講座」に講座名を改名いたしました。 現在の講座スタッフ・関係者は、教授以下、赤羽 学准教授、野田龍也講師、岡本左和子学内講師、教務職員1名、大学院生(博士・修士)11名、研究補助6名の他、 博士研究員・専修生・医学科研究生、研究医養成コース学生、リサーチ・アシスタント、非常勤講師、臨床教授・准教授らを含めると52名に及ぶ規模の講座として運営中です。

当講座は、大学の講義では公衆衛生分野を担当しております。医学科では、3年生「衛生学・公衆衛生学I」で6時間の講義、4年生「衛生学・公衆衛生学II」で講義30時間と実習1週間を担当しています。 実習では、保健所、保健環境研究センター、市町村保健センター、厚生行政関係機関等で実施されている事業を通じて、 公衆衛生、厚生行政、政策医学、予防医学の考え方や方法論を修得することを目的として、みっちり4日間の実地研修をしています。
毎年、実習受入施設には無理を言ってご協力いただいているのですが、学生の中には現場での体験に心を打たれ、実習後に「公衆衛生の道を目指す!」と言ってくれる者が年に1、2人は出てきておりうれしく思っています。 また研究室配属期間には長期間講座に張り付き、今村他、講座先生方が出席する審議会や研究班会議の傍聴や講座で扱っているデータの分析を実践してもらったりしています。
看護学科では3年生「公衆衛生概論」「保健統計学」を担当しており、大学院医学研究科の講義としては、博士・修士課程の主科目・選択科目の他に、修士課程の共通科目として「衛生社会医学」の講義を担当しています。 担当講義時間数は年々増加し大変な状況ですが、少ない教員数で協力して行っています。

当講座で行っている研究テーマも、
  • (1)健康に関するリスク分析研究
  • (2)健康危機管理研究
  • (3)医療政策研究
  • (4)医療経済学・医療経営学研究
  • (5)疫学・保健統計学研究
  • (6)リスクコミュニケーション分野
  • (7)分子予防医学分野
  • (8)国策調査データ分析
と多岐に渡っています。

そのため、それぞれが普段従事している研究内容を発表し、その成果を共有する事を目的として、毎年、健康政策医学講座サマーセミナーを開催しております。 2016年は奈良県医師会館 会議室で開催、過去には奈良県立万葉文化館、東大寺総合文化センターなどで開催し、毎年、活発な意見交換が行われ、活気あるセミナーとなっています。

講座での主な研究内容としては、
  • ■地域医療計画や地域医療ビジョン策定
  • ■食品の市販後調査と健康影響
  • ■食品防御
  • ■花粉症の発症疫学
  • ■ICD-11へのWHO改訂作業
  • ■標準的な院内清掃のあり方
  • ■薬価算定基準の定量化
  • ■過疎の村における医師確保困難問題
  • ■奈良県の高齢者の入院需要推計と介護保険施設、訪問サービス従事看護師の需要予測
  • ■ダイオキシン類の健康影響
  • ■リスクコミュニケーションと社会での過剰反応回避
  • ■遺伝子組み換え食品でのリスクコミュニケーション
  • ■7対1入院基本料の施設基準を満たすための予測式の構築
  • ■看護師の時間外労働に関する文献レビュー
  • ■看護師の離職就職理由調査
  • ■風疹と子宮頸がんの予防接種の受療行動への影響因子の検討
  • ■妊婦のインフルエンザに対する意識と予防行動
  • ■病院経営分析
  • ■消防庁による救急蘇生統計(ウツタイン様式)データ分析
など多種多様な研究に取り組んでおります。
これらの研究成果は出来るだけ論文としてもまとめており、ここ3年でみても、英文論文で50本以上輩出しております。 また、研究成果を取りまとめた書籍も出版されています。

話題となった研究成果としては、当講座が中心となって執筆した論文が2011年2月にBMJ (British Medical Journal)に掲載されました。 これは、院外での心肺機能停止患者への心肺蘇生法として、 心臓マッサージだけで良いのかそれとも心臓マッサージ+人工呼吸が良いのかについて、わが国のウツタインデータを用いて分析したものです。 近年、心肺蘇生法は心臓マッサージのみで良いという論調になっており、 我々の結果は逆に、心臓マッサージ+人工呼吸のほうが予後は良いというものでした。この議論は世界的に注目されていることから、 我々の論文がBMJのトップページで紹介されている他、今週のeditorialとして取り上げられています。

社会貢献としては、厚生労働省の医政局:医療計画の見直し等に関する検討会、健康局:脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会、エイズ動向委員会、 エイズ対策研究事業事前評価委員会および中間・事後評価委員会、老健局:社会保障審議会専門委員、)介護老人保健施設における施設の目的を踏まえたサービスの適正な提供体制等に関する調査研究事業、 農林水産省 食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会といった国の審議会や、奈良県の地域医療構想策定会議や長寿医療制度懇話会、橿原市建築審査会といった県・市の審議会に委員、委員長として参加しています。
(社)全国自治体病院協議会 診療報酬対策委員会アドバイザーやアクリフーズ「農薬混入事件に関する第三者検証委員会」委員長、日本生協連・冷凍ギョーザ問題検証委員も務めました。
また、大阪市立大学医学部、杏林大学医学部附属病院の客員教授を併任、国立、県立、市民病院の経営支援を行っています。

当講座は今までの公衆衛生学講座をさらに発展的な編成となっており、従来の公衆衛生学分野に加えて、医療政策、医療経済、EBPH(evidence based public health)などの分野の研究や教育に力を入れています。 公衆衛生学は、集団の健康の分析に基づく地域全体の健康への脅威を扱う学問であり、社会保障・社会福祉などの社会状況や生活環境等を含めた医学・医療が社会とかかわる領域を研究の対象とし、 人々の健康を保持増進するものです。

WHO(世界保健機関)では、公衆衛生学の定義を、
「Public Health is the art and science of preventing disease, prolonging life and promoting physical and mental efficiency through the organized community efforts.
(組織された地域社会の努力を通して、疾病を予防し、生命を延長し、身体的、精神的機能の増進をはかる科学であり技術である)」としています。
臨床医学が個人水準で健康を扱うのに対して、公衆衛生は、人々の生きている社会そのものを、つまり一定地域の住民や職場で働く人などの「社会集団」を対象にしており、この点が臨床医学との大きな違いです。 そのため研究テーマも、(1)健康政策学、(2)医療経済・医療制度、(3)環境・社会・行動衛生、(4)保健統計学、(5)疫学、(6)危機管理など多岐の領域にわたります。

公衆衛生学講座はこれらの社会医学研究を通じて得られた科学的根拠を国や自治体の健康政策の立案にも役立てていきたいと考えています。
皆様方のご指導とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

興味を持たれた方、志してみたい方、是非、当講座までお気軽にお立ち寄り下さい。

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